2015年1月29日木曜日

男の涙

昨日の事だ。
夫が言った。"俺の父親は長くない。ここ二、三日飲み食いせず、痛み止めにモルヒネを打ってもらっているだけだ。"と。

私は迷わず”お金はないけど、飛行機代なら出せるから行って!"と言った。

直ぐに用意をし始めたが、勿論人の死を予測できる訳ではなく、とにかく大丈夫ならいいのだがと思いながらだった。

娘を寝かしたところで私もうとうとしていると夫が誰か身内と話した後、しゃくるように泣いた。

びっくりして部屋に行くと"二分前に父が息を引き取ったんだ。"と言った。
予測はしていたが、私にとってもすごいショックだった。

脳に腫瘍ができていたことが後で分かり、心臓が弱いので麻酔無しの手術ならと医者から勧められたのだがそれを拒んでから半年での出来事だ。

年を取っていたから進行は遅かったに違いないが、あっという間に半身が不自由になり、話すのも食べるのも大変苦労した。そして耳の聞こえも悪くなった。

パキスタンから夫の姉が来れる事になった時、嬉しさの余り一時具合が和らいだ。食べたり飲んだりもできるまでになった。でも、それも束の間の喜びだった。

夫のお母さん、二人の姉と姪の前で深い息を一つして逝ってしまった。

お義父さん、私と夫が結婚することになっても一度として反対もせず快く家族の一員として招き入れてくれてありがとう!
私が自分の家族と上手くいかず苦労しているのを見て、"私はXの事を自分の本当の娘のように思っているからちゃんとお父さんはいるよ。"と励ましてくれた。

こんなに出来の悪い嫁にいつも優しい言葉をかけてくれた。

苦しかったでしょう。痛かったでしょう。でも、これでやっと痛みから解放されたね。

これからも一生あなたの事を忘れないでしょう。
一杯の優しさをありがとう。

もうすぐ夫の飛行機が飛び立つ。

私たちは一緒に行けないけど、私たちの分もお義父さんの事をお葬式でしっかり見送って来てね。

家族の火が、とても大きな火がふっと消えた。皆の小さなたくさんの炎に囲まれて。



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